さーふ

暇だ。

サーフィンしたい。

7時半出庫。

走行距離 347キロ。


● 某所~某所
 極楽の加藤さんをまた乗せた。

 縁があるなあ。

 ついさっきまで、日ハム対西武を山本さんの解説で聞いていたので

びっくり。
「今日は暑いねえ」

 と、僕に気をつかう加藤さんはいい人かも。


● 渋谷~国立 首都高から中央高速 午前2:40着 12940円
 ダウンタウンの浜ちゃんそっくりのサラリーマン・

 完全に酔いつぶれていて、国立に着いても起きてくれない。

 起こすに30分もかかってしまった。

 僕たちタクシードライバーはお客さんに触れてはいけないので、声だ

けで勝負する。

 起きてからもたいへんで、財布をさがすのに、さらに30分もかかって

しまった。
 さっさと財布を出してくれればいいのに、意味もなく携帯をパソコンのように

たたきはじめたりする、この浜ちゃんはきっと会社ではエリートなんだろうなあ。


7時半出庫。
 走行距離 355キロ。

 トレーニングのために営業所に戻ると、優秀な先輩が「もうやめた。やる
気がないよ」って怒っていた。
 朝変えたばかりのシートをこどもに汚されたのだそうだ。
 シートの上ではねるこどもは、もう珍しくないし、それを叱らない親もあ
たりまえになってきた。

●国立医療センター~野沢 10:00着 1060円
 脚立から落ちて肋骨を骨折したおじちゃんの退院。
 折れた骨で片方の肺に穴が開いてしまったのだそうだ。
「肺の空気が身体にぬけてな、ぼこぼこいってるんだ。その空気が身体から
ぬけたからいいけど、ぬけねえと、背中から穴あけるハズだったんだぜえ」
 痛そう! 

●用賀~桐ヶ谷斎条 17:40 3060円
 昔のタクシードライバーは、川越街道の本田技研の前のおでんやで仕事中
でも平気で飲んでいたって話しを聞いた。


 帰庫したら、いつも遅くまで先輩が怒っていた。
 最後に二子玉川で乗せた外人の下痢便でシートが汚染されたのだそうだ。
 おえー!
 子供に跳ねられるどころじゃないなあ。

泥酔

駅前のベンチで熟睡中のおっちゃん。金曜だなあ。たまに道路に寝てる人もいるので油断はできない

7時半出庫。
 走行距離 378キロ。

 朝、自分の車を見ると、シートが真っ黒。
 僕の相番(相方)は天然なんだけど、よくこんな汚いシートで営業できたな、
と驚く。
 さらに、コンソールボックスを開けると、手付かずのマクドナルドのハンバ
ーガーとポテトを発見!
 買ったはいいけど食べる暇がなかったのだろうか?
 僕への進物なのだろうか?
 しばらく悩む。
 食べ物の忘れ物ははじめてじゃないのだ。

● 新町~溝口 16:00
 18日に地震がくるから、福島に逃げるというおばちゃん。
 新聞に書いてあったのだそうだ。
「福島にいて東京がすごい被害を受けたら、罪悪感を感じるかしら」
 だってさ。

● 駒沢~渋谷東急本店 16:45 2180円
 ちょっといかれた女の子。
 料金を払う際、一万円札をわざわざくしゃくしゃに丸めて僕に投げつけて
きた。
 声もでなかった。

● 桜新町~鵜の木 24:55着 3380円
「シングルマザーでたいへんなのよ。今も子供がおなかすかせて待ってるの」
 と、僕を急がせる女性を乗せた。
「そうか女手ひとつで、たいへんだなあ」
 と、思いつつ、よく話しを聞くと、子供は高校生で、シングルマザーって
いうのも去年離婚したからということだ。 
 高校生なら自分で飯くらい作れ!
 と、ちょっと憤ってしまいましたね。

高速下

18日に地震がくるから福島に逃げると言うおばちゃんを乗せた。

ミルコ

雨の音を聞きながら本を読むのが好きなんだけど、今日はタクシー。雨のおかげでかなり忙しいです。

そう言えば、お客さんにキャバクラに誘われたのだった。
「キャバクラはやっぱり三軒茶屋だよ。安くて外れがない!」
 お客さんは、三軒茶屋のキャバクラの宣伝マンのように力説
していたのだった。
「いきましょう、いきましょう」
 と、僕は返事をしたのだけど、待ってないよね。

 今日もタクシーはお休み。
 原稿書いてます。
 今夜は野球中継とK-1。
 それまでに、やっつけちゃおう。
なにげないところからものすごい長距離が出る事を、タクシードライバー
 は『おばけ』と呼ぶ。
  単に長距離の事をさす人もいるけれど、やっぱり細い路地から乗ってきた
 お客さんが大阪までだったりする方がイメージ的にはぴったりくる。

  僕が勤める営業所には、大阪まで二回走った先輩がいる。
  どちらも、無線で呼ばれた訳じゃなく、普通の道で拾ったお客さんだった
 のだそうだ。
 「そりゃあ、うれしかったけどねえ。疲れたよ。オレ、歳だからさ、しばら
 くは疲れがとれなかったよ。あの疲れを考えると、いい仕事なのかどうだか、
 わかんないなあ……」
  先輩はそう言って、白髪頭を掻いた。

  残念ながら、僕はまだ『おばけ』を乗せた経験はないけど、先日、『おば
 け』になった事のあるお客さんを駒沢駅から乗せた。

  タクシーが大好きなおばちゃんで、日に最低4回は乗るのだそうだ。
 「急に青森に行かなくちゃならなくなってねえ」
  おばちゃんは、東北訛りだった。
 「青森ですか?」
 「うん。夜中だったからねえ。無線使おうか、とも思ったんだけど、試しに
 外に出てみたら、ちょうどタクシーが走ってきてね」
 「それに乗ったんですね」
 「うん」
 「運転手さん、びっくりしたでしょう?」
 「そうだねえ」
 「それからすぐに?」
 「いや、運転手さんが会社に連絡したらね、ふたりで行けって。つまり運転手
 さんふたりだよ。往復してもらったからね、36万だったよ」
 「えー! 36万ですか?」
 「うん。運転手さんには、ひとりに2万チップあげたよ」
 「合計40万ですか? わあー!」
  不景気というけれど、すごい人はいるものなのだ。

  と、『おばけ』は運転手にとって、最高のお客さんなのだけど、本当の『お
 ばけ』を乗せた運転手もいる。
  まあ、その話しはいつか、夏にでも……。